てきとう日記

てきとうです

今年読んで印象的だった本

気づいたら2023年が終わりそうで焦る。今年はそんなに読みませんでした。
今年は7月まで忙しく、それ以降は暇していたはずなのだけど、7月までの方が読書量は多かった気がして笑える。忙しい方が元気な節はある。暇だと本当に何もせず、インスタのちょいエロリールだけ見て1日が終わる。
普段なら本棚を眺めれば今年読んだ本が分かるが、今年は引っ越しがあったのでそういうわけにも行かなかった。段ボールを解いて本を片付ける必要があった。何冊か紛失した。『啓蒙思想2.0』とか。どこに行ったのやら……

 

習得への情熱ーチェスから武術へー(みすず書房)

「上達するための、僕の意識的学習法」という副題がついている。著者のジョッシュ・ウェイツキン氏はチェスの世界チャンプ兼、太極拳の世界チャンプでもあるという嘘みたいな経歴を持っている。そんな氏がチェスと太極拳を通じて得た学習のエッセンスがまとまっている一冊。スポーツでも勉強でも何でも、何か得意なことがあった人は共感しつつ読めると思う。無い人がどう感じるかは分からない。

小手先の技術ではなく体系的に学ぶのが長期的には良い。本番に最大のパフォーマンスを発揮するため、ゾーンに絶対は入るルーティーンを用意する。そういう内容だった気がする。両方とも自分の興味分野である。前者は学習過程(能力開発?)、後者は禅的な思想。


チェスや太極拳のシーンの状況、心情の描写が巧みで読み物としても面白い。

 

私たちはどう学んでいるのか/類似と思考

面白い学問分野もあるもので、人の学習過程を研究している科学者がいる。その研究結果を簡単に解説したのが前者の新書で、後者は著者の論文をちくま学芸文庫から出版したもの。細かい内容は忘れたが、直感的に分かる部分と、目からウロコな部分それぞれあった。脳は無意識にも学習しているので早めに取り掛かった方がいい、みたいな教訓を得て実践している。
学習過程を科学的に知っていれば、「わかんねー!ウワー!」となる機会が減る。「あとこれを数日に分けて数回こなせば習得可能」と冷静になることができる。オススメ。

 

傷を愛せるか

精神科医によるエッセイ。普段からメンタルを壊した人相手にお話をしている人であるためか、言葉選びが丁寧で、スッと読める。何かと悩みを抱えがちな人がどうやって生きていくべきか、含蓄のある言葉が揃っていた気がする。他責と自責のバランスがどうこう、とかそういう話。インターネット論壇と違い極端な結論ではないのでそれなりに共感できるでしょう。

旅の中で書かれているので旅行記としても楽しい。
オススメ。

滅ぼす 上下(ウェルベック)

ウェルベックが本国で新刊を出したという噂は聞いていて、ずっと翻訳されないか待っていたのだが、シホシケ後すぐに出版されてありがたかった。預言者と言われているような作家だけど、本作では高齢者医療ヤバくない?という問題提起があった。それはそう。
作中を貫くテーマは落ち着いたものだった気がする。もともと保守の作家ではあるでしょうが、保守の主人公が破滅的な最期を迎えることなく、いい感じに終わった記憶。他の登場人物もそれなりに幸せそうだった気がするが、🤓だけが最悪の最期を迎えていたような*1

 

登場人物の生い立ち、現在の職業・政治的立場なんかが綿密に描写されていてかなり性格は悪い(いつものこと)。今回は主人公一族、その配偶者が全員違ったバックグラウンドを持っていて、ちゃんと行動にも反映されていて本当に面白い。日本に同じような作家がいたらインターネットで大流行すると思う(悪い意味で)。

なぜ今、仏教なのか

仏教の教義を進化心理学の観点から正当化。なお、ここでの仏教は瞑想系の流派。日本のとは別の一派なのだと思う。
人間は、野生を生き抜いてきた自然選択によりプログラムされている。しかし、文明を築き、野生生活を失った人間にとって、プログラムの一部は邪魔になることがある。例えば、甘いものを食べすぎてしまう(カロリー摂取のプログラム)・怒り(邪魔の排除)など。その辺をプログラミングし直すのが瞑想なんですわ、みたいな感じ。ブッダ進化心理学なんて知らなかったに決まっているが、深い洞察力を持っていたから、「悟り」により文明社会に生きる人間としてのあり方を発見できたんでしょう、ということらしい。

仏教のことも分かり、知的好奇心も満たされ、オススメ。

 

他にも読んでいるはずなのだが

小説が少ない。日本人は雑誌「文藝」で読んでいました。オモロかったのは佐藤究でしょうか。テスカトリポカの人。『幽玄F』を読んだ。阿部和重とかそういう感じだった。幽玄の言葉で思い出したが『風姿花伝』を読んだ。能の秘伝書だが、人に見られることを意識するのであればどのように振る舞うべきか、ということが書いてある。書いてあるというか、現代人にも読み替えて応用が可能。文藝に戻ると、自分としてはハロプロ作詞家として馴染み深い児玉雨子先生が芥川賞にノミネート。作品じたいはあまりピンと来なかったのだが、書く詩は韻が使われており好きだ。一番好きなのは「逆らった喧騒 あなたへ直行(素肌は熱帯夜・OCHA NORMA)」。他に文藝賞なんかも読んだが、ピンと来なかったな〜。もう感性がおじさんなのかもしれない。

ファイト・クラブ』のチャック・パラニュークの新刊『インヴェンション・オブ・サウンド』も読んだ。細かい内容は忘れたが、相変わらず面白そうな設定。「世界の全員が同時に発する悲鳴」を欲する音響効果技師と17年前に行方不明になった娘をダークウェブで探し続ける父親が登場。父親の語りが統合失調症っぽいというか、妙な感じだった記憶。おもしれーのだが、期待しすぎた感はあった。『ファイト・クラブ』も『サバイバー』もオモロすぎたから。絶版の他の書籍も、電子で買って読んでみるべきかも。

『叛逆の神話』『啓蒙思想2.0』も今年だったと思うのだが、紛失した。自分の保守の価値観を強固にした2冊。また暇なうちに読みたいんだけど、本当にどこに行ったんだろう。

ソラリス読んだのも今年かな。グレッグ・イーガンの本も今年お初かな?SFはちょくちょく読む。ディックの『流れよ我が涙、と警官は言った』というタイトル良すぎ作品も今年読んだ。

 

他にも色々読んだだろうが、忘れた。でも、それで構わないと思っている。ふとした時いつか思い出すだろうし、読み返せば良い。
『本は読めないものだから心配するな』も読んでいる今。

 

*1:リベラル系でヒステリックな妻と結婚し、精子バンクを利用し黒人の子を授かる。妻はオタク君が無精子症だと言い回っていたが、そんな事実はなかった。というエピソードなど。最悪や…